合格実績の読みとり方

毎年、年末から翌年の5月頃にかけて、 大手・中小の各塾が新聞に新規生徒募集の折り込みチラシを入れていますが、その中に、 合格実績の欄が必ずあります。果たして、その合格実績は信用できるのでしょうか。 また、合格実績に記述されている数字は、どのような意味があるのでしょうか。 そのことについて、プロの立場から、分析をしてみたいと思います。

周知のとおり、関東一円に教室を展開しているデパートのような大手塾がある一方、 地域に根ざした専門店のような小規模な塾もあります。 大手塾の在籍生徒数が1万人から場合によっては2万人以上であるのに対して、 1教室のみで運営している塾は1学年あたりの在籍生徒数は5人から多くて60人くらいです。 2〜3教室展開している中規模塾でも1学年あたりの在籍生徒数が300人を越えることはありません。 このような現状の元で、チラシの実数を比較しても無意味です。

そこで、VERITASでは、町田市内で展開している大手塾を対象に各塾の町田教室の合格実績を入手し、 分析をおこなってきました。ところが、ここでも実数比較が無意味であることが判明しました。 大手塾は、膨大な資本と知名度を利用して、駅前に大規模な教室を展開し、広範囲から生徒を掻き集めます。 東京都を拠点にしている中堅塾の広告宣伝費用は、その塾の内部資料によれば、約3億円です。 生徒一人当たりに換算して46,000円にもなります。一方、VERITASの広告宣伝費用は、 多く見積もって100万円に遠く及びません。生徒一人当たりの換算では10,000円ほどです。 また、正確な統計はないのですが、我々の経験から、大手塾の1教室あたりのサービスエリアは、 半径10kmから場合によっては20kmにおよびます。VERITASのサービスエリアが半径1km〜3kmと比較すると、 面積比にして10倍以上の開きがあります。

肝心の在籍生徒数はどうでしょうか。VERITASで調査した結果、 大手塾は1(授業)クラスにVERITASの3.5倍の生徒を確保し、クラスも4倍ありました。 また、在籍生徒の中学校も広範囲におよんでいました。

では、大手塾の個々の教室の合格実績と小規模塾の合格実績を比較するのにどのような方法があるでしょうか。 マーケティング・塾経済に関して勉強不足の学習塾関係者の中にも、 「在籍人数を加味し、同じ規模にして比較すれば、正しい数字を得ることができる。」 と単純に考える方がいらっしゃいます。しかし、事はそんなに簡単ではありません。

それは、大手塾の示す、数字自体にも疑問があるからです。 神奈川県横浜市を中心に教室展開している大手塾3校の合格実績を見ると、 その合計数が難関上位校の合格者総数を、越えていることが希ではありません。 また、個人的にも、大手塾広報担当者が3倍以上も水増しして広告しているとの告白話しを入手したことがあります。 この水増し発表は、零細塾では、1教室しかないため不可能です。 1教室ないし2教室しか展開していない塾なら、出身中学校名まで公表しなくても、、 水増しが不可能であることは、疑う余地がありません。



このように考えると、1〜3教室位の規模の塾の「合格実績」は信じるに値するものであるかのように思われますが、 そこにも落とし穴があります。母集団が少人数であるため、年度ごとに生徒の成績・在籍中学校・志望に偏りが生じ ます(少人数の生徒を対象にしているため致し方のないことです)。そのため、例えば前年度の合格実績だけでは、 その塾の指導能力を測定することが不可能なのです。

大手塾の指導はある程度マニュアル化されている(そのための独自テキスト、統一カリキュラム・社内研修)ため、講師 個人の能力の大小が直接には授業に反映されません(講師の能力に対する依存度が低い)。一方、ほとんどの中小塾は、 大手塾とは対局で、授業は講師の能力にのみ依存しています。ところが、「合格実績」の中には、講師の異動や退職の ため、現在教えていない講師(その講師が特に優秀だったりする)による実績もそのまま含まれています。そして、なか には8割以上の講師が他塾に移ってしまったにもかかわらず、恥ずかしげもなく過去の栄光をかざして生徒募集をして いる塾もあります。

このように見てきますと、結局、塾の「合格実績」を鵜呑みにしてはいけないことが、お解りいただけると思います。 では、どこに注意してどのように「読む」のか、以下に箇条書きで記します。

  • 大手塾の合格実績の「読み方」
    1. 卒業者の人数が記されていたら、合格者数を卒業者数で割って、パーセンテージを出す。
    2. 教室数がわかれば、合格者数を教室数で割って、1教室あたりの合格実績に置き換える。
    3. 合格者名簿が入手できるなら、重複合格を調べる。→1人の生徒が5校位実績を稼いでいる場合も多い。
    4. 卒業した学校名がわかるなら、当該教室の卒業生の進路が推測できる。
    5. 入塾テスト実施していて、希望者全員入塾制でない場合は、実績が良くて当然である。
    6. 実績が、難関上位校や中堅校位までしか記載されていなかったら、それ以下の高校に進学する生徒は、 その塾にとって、授業料を毎月払ってくれる大切な「お客様」で、「生徒」ではない。
    7. 根拠のない合格者の水増は、見破れないことを、頭の片隅に。

  • 中小塾の合格実績の「読み方」
    1. 中小塾の合格者数自体は、誤魔化しが利かないから信用しても良い。
    2. 前年度実績を、単年度で掲載していない場合(「過去○○年度分」などの記載)前年度は実績が悪かったと考える。→ 在籍生徒の偏りが原因の場合もあるが、優秀な講師が辞めた可能性も高い。 最近では、当塾のように、広告では概略のみを公表し、詳細をHPで公表している塾もあるので、 広告にURLが記載されている場合は、必ずアクセスすること。
    3. 記載年度の講師が現在も在籍し、講義をしているのか、情報を集める必要がある。
    4. 前年度分だけでなく、過去数年間の累計が表示してある塾なら安心だ。→「大手塾との比較・受験傾向の検討」を してもらうために塾は記載している。
    5. 所謂「難関上位校」合格者数が過去5年に複数(できれば2桁)あれば、指導能力に問題はない。
    6. 中堅校以下の記載をしていない塾は、大手と同じように「お客様」扱いかも。
    7. 合格校がバラエティーに富んでいれば、進路指導が行き届いている証拠だ。 →進学校の研究をしない塾<実は、これが非常に多い!>は、 偏差値によるパターン通りの進路指導しか行えない。